露木幸彦の新刊「婚活貧乏」
(中央公論ラクレ新書・6月10日発売)の概要その4
できちゃった結婚したのに、中絶した女性の悲劇
さて婚活に失敗し、全財産と家族を失った男性のお話をしました。
彼は男性であり、お金を払う側の人間ですが、
男性だから、お金を払う側だから、婚活後にトラブルに巻き込まれたのでしょうか?
これは男性だけが陥る罠ではありません。
婚活「後」の失敗で、生涯、人生を棒に振るのは、男性も女性も同じです。
女性も一瞬の気に迷いから、すべてを失う危険と隣り合わせです。
彼女が事務所を訪れたのは、今から2年前の10月。
20度前後の秋らしい陽気で、穏やかな日でしたが、彼女の様子は全く穏やかではありませんでした。
歯を食いしばり、何か覚悟を決めたような顔です。
駅から事務所まで徒歩10〜15分。十分、歩ける距離ですが、彼女はタクシーを使ってきました。
なぜでしょうか?
「主人とはヤフーのお見合いサイトで知り合いました。彼は年下で私の方が、給料がいいんですが
公務員ということで信用していました」
彼女もまた、「できちゃった結婚」だということ。
彼女は身重な自分の身体を気使って、わざわざタクシーで来たのです。
すでに会社を寿退社しており、3カ月後に結婚式、新婚旅行を控えていました。
彼女にとって人生のなかで、一番幸せな時期のはずです。
しかし、すでに結婚相手と別れる決心をしたと言う。
一体、どういうことなのでしょうか?
「同棲を始めてから状況は一変しました。
彼は無断で家を出て、夜中まで帰ってこないという日が続きました。
私がツワリと風邪で苦しんでいるのに。どうやら夜な夜なパチンコに行っているようです。
私のことを心配する様子もありません。
私がそのことを注意すると『ふざけるな』『怒るぞ』と大きな声を出すばかりで、
いくら時間が経っても何も改善されませんでした。」
ここまでの話だけなら、どこにでもある、普通の痴話喧嘩です。
喧嘩は時間が解決するものであり、しばらくすれば、直に仲直りをするのが「よくある話」です。
一方、喧嘩・仲直りという順ではなく、いきなり「別れる」という話に発展するのは、とても不自然です。
なぜ、彼女は極端な決断をするに至ったのでしょうか?
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子供のお金を父親が横領?!
「私が一番ショックだったのは、彼にお金を勝手に使われたことです。50万円ですが
出産のために、私が少しずつ貯めていたお金でした。
私はこのことを彼に問い詰めると『本当に俺の子供なのか』と言い出したため
気持ちのネジが完全に外れてしまいました。」
子供のためのお金をギャンブルに使われ、彼女がショックを受けたことは事実ですが
そうは言っても、子供の喧嘩ではありませんので、嫌だからといって
ポイっと投げ出すわけにはいきません。
大人の喧嘩では、一時の感情で今までの関係をご破算するわけにはいきません。
特に彼女の場合、長い時間をかけて、結婚式、新婚旅行などの準備をしてきたからです。
彼女としても、最悪の事態を避けようと、できる限りの努力をしました。
「やり直せるならやり直したいと思い、彼のお母さんに相談したんです。
でもお母さんは彼をかばうばかりで、注意してくれることはなく
さらに『別れたいなら、好きにすれば』と捨て台詞まで吐かれ・・・。」
「もう、こんな人とは将来を考えられないと思い、私の方から別れを切り出しました。
彼も『実はそんなに好きじゃなかった』とあっさり受け入れました」
彼女のなかでは「別れる、別れない」という問題はすでに解決していました。
彼女が私に相談したかったのは2人が住む部屋の家財、家具のことです。
アパートには男性が残ることは決まっていますが、
家財を置いていくよう、言われているのです。
ただ、家財には彼女の実家がお金を出したものもあり
彼女としては「はい、そうですか」とはいかないのです。
婚活の後始末は、簡単ではありません。
男女が「くっつく、離れる」という気持ちの問題だけなら、まだマシですが
必ず、お金が絡んでくるからです。
例えば、彼女の場合、直前になって結婚式、二次会、新婚旅行を取りやめたので
30万円近いキャンセル料が発生しました。
男性が結婚業者、旅行業者への連絡をせず、また男性が業者からの請求を無視したため
この費用も彼女が負担することに。
結局、これらの問題は話し合いで解決できず、調停(家庭裁判所での仲裁)に持ち込まれることに。
私が相談を受けてから、話がまとまるまで8ヵ月の時間を要しました。
結婚の期間がわずか6カ月ですから、これでは何をやっているのか分かりません。
仲睦まじい新婚の時間より、喧嘩をし、いがみ合っている時間の方が長いのですから。
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婚活にまつわる「命」の問題
彼女に突きつけられたのはお金の問題、気持ちの問題だけではありません。
同時に命の問題も抱えていました。
彼女が事務所に来たときには、すでに妊娠3カ月。
私が何より心配したのは身ごもっている胎児のことです。
私は「1人で育てていく選択肢もある」とアドバイスしましたが、
彼女の気持ちは決まっているようで、考えは変わりませんでした。
それから1週間後、彼女は病院で中絶手術を受けました。
やはり、嫌いな男性の子供を産み、育てていく気持ちにはなれなかったようです。
他の問題と同じく、命の問題についても、最悪の結果になりました。
彼女が初めて事務所に来てから1年。彼女から1通の手紙が届きました。
男性と別れた後は実家に戻り、連絡をとっていないようです。
今も中絶の後遺症に悩み、その影響で1日2,3時間しか眠れない日が続き、
また食事がとれる日、とれない日が交互に続きます。
問題が発覚して8ヶ月間で、彼女は12キロも体重を減らし、急激にやせ細りましたが
今もその体重は戻っていません。
そういった理由で、まだ仕事には復帰できていません。
手紙の最後には、こう書いてありました。
「後から知ったんですが、彼の一家はみんな、離婚しているようです。
両親のことは知っていましたが、兄弟、従妹、伯父さんまで・・・
なんでもっと早く気付かなかったんでしょうか?」
郵便には手紙と一緒に、彼女の趣味であるハーブの茶葉が入っていました。
この手紙を受け取ってから、もう1年になろうとしていますが、私は今だに使う気にはなれません。
別れ際に味わった悔しさや失望感。
それは1年経った今でも、まだ彼女の尾を引いているのです。
婚活の失敗は、一瞬限りの苦しみではなく、今後の人生に暗い影を落とすことになります。
過去を振り返れば振り返るほど、その悔しさや失望感は再燃します。
なぜなら、彼女が婚活の失敗で失ったものは、すでに取り返しがつかないからです。
彼女が社会人になってから、今まで築き上げ、そして今回の結婚で一気に失ったものの一覧です。
・30万円(結婚式等のキャンセル料)と50万円(子供のための貯金)
・結婚するときに買った家財一式
・新卒で就職し、10年間勤めてきた会社での仕事と安定した収入
(化粧品会社の総合職で、年収500万円)
・人生で一番大事な時間を過ごす幸福感
・この世に産まれてこなかった小さな命
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婚活に失敗すると、女性はワーキングプアに
前章で婚活「後」に失敗することで貧困層の仲間入りをし、
格差社会の底辺に固定されるというお話をしました。
彼女が仮に出産に踏み切ったとしても「貧困」「格差」というキーワードは共通です。
お金の面でいえば、もっと酷い現実が待ち構えています。
シングルで子供を出産すると、多くはワーキンプアになるというデータがあります。
母子家庭の平均所得は、わずか212万円。(平成14年、厚生労働省調べ)
昼夜問わず働いても働いても、所得が生活保護の基準を下回るという地獄絵図です。
また父親(元夫)から養育費をもらっている母子家庭は全体のたった34%です。
誰にも援助を頼めない、でも自分の力ではどうしようもないと絶望的な現実です。
彼女は傍から見れば、婚活の勝ち組でした。
ヤフーのサイトで結婚相手を見つけ、専業主婦になった時点では、です。
しかし、直後に負け組に転落します。
夫との間で金銭トラブルが発生し、結婚生活を続けられなくなったからです。
その後は子供を中絶し、仕事を失い、両親に迷惑をかけることに。
仮に出産したとしても、女手1つで赤ん坊を育て、育児の合間に低賃金で働き、
元夫からの援助を期待できない。
勝ち組と負け組の落差は、天国と地獄ほど極端に離れています。
私は彼女の悲劇の現場に立会い、しばらくは、そのことを思い出すのも嫌になりました。
しかし、どういうわけか、その後も同じような相談が立て続けに寄せられるのです。
それなのに、自分の都合で現実から目を背けることはできません。
そして婚活「後」の失敗を未然に防ぐことはできないのか、1年以上ずっと、考えてきました。
いろいろ試行錯誤した結果、得られた結論は、「やはり防げる悲劇だった」ということです。
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失敗の7割は「相手選び」
まずは、この数字をご覧ください。
私は本書を執筆するにあたり、アンケートを行いました。
対象は私の相談者で、結婚期間0〜3年で関係を解消した20〜30代の男女。
次の2つのうち、結婚相手がどちらに該当するのかを尋ねました。
(平成21年9月21〜25日に実施。有効回答数216人)
1.今思えば、はじめから問題がある人だった→性悪説
2.結婚生活のなかで(交際期間のなかで)おかしくなった→性善説
<アンケート結果>
1.性悪説(73%) 男性 31人 女性125人
2.性善説(27%) 男性 22人 女性38人
このアンケートの結果を見ると、婚活「後」に失敗した人のうち、7割以上が
「今思えば、結婚相手ははじめから問題がある人だった」と考えています。
一方、「結婚相手が結婚生活のなかで(交際期間のなかで)おかしくなった」と考える人はわずか3割です。
これは失敗の原因は、交際期間中や結婚期間中の関係構築ではなく
「相手選び」段階にあったことを意味しています。
婚活「後」のトラブルをすべて一括りにすることはできません。
問題を誘発するタイプ、いわゆるトラブルメーカーには2種類、存在するからです。
婚活トラブルは未然に防げるものと、防げないものに分けられます。
あらかじめ予見し、危険を回避できるのは「結婚相手にもともと問題がある場合」で
未然に危険人物かどうか見破ることができないのは「関係を築くなかで問題が発生する場合」です。
ここでは前者を性悪説、後者と性善説を呼びます。
本書では「性悪説」に話を絞ります。
なぜなら、「性悪説」の場合、婚活の段階で対処することが可能だからです。
間違った相手を選ばないよう、相手を見極める力を手に入れることが自己防衛策です。
一方、「性悪説」については、相手選びの時点では、トラブルの兆候を発見できないため
婚活の段階では手を打つことができません。
あなたがやるべきことは簡単です。
「性悪説」の人間にはどのような特徴があるのか、傾向と対策を頭のなかに入れておくことです。
そして今、目の前にいる異性がそれに該当するのかどうか、チェックすることです。
私は残念ながら、婚活に失敗したケースばかり見てきましたが、そこで得られた「傾向と対策」を
ここであなたに包み隠さず、教え込みます。
前章で挙げた男性、そして本章で挙げた女性の悲劇は、この情報さえあれば簡単に防ぐことができました。
例えば、男性の場合、「精神不安定」の女性の特徴を知り、結婚相手が当てはまるかどうか、チェックする。
女性の場合、「浪費癖」の男性の特徴を知り、結婚相手が当てはまるかどうか、チェックする。
目の前の相手に夢中になるがあまり、この作業が抜け落ちており、
結果として人生を棒に振ることになりました。
賢明なあなたは、すぐ理解できるはずです。
性悪説の人を結婚相手に選んだ時点で、お先真っ暗だということを。
彼、彼女の二の舞を避けるには、まず「そもそも問題のある相手」を選ばないことが第一です。
トラブルが起こってから、あたふたするのではなく、
「トラブルを起こしそうな人とは関わらない」ことが最上の策です。
大事なのは事後策ではなく、事前策なのです。
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婚活ブームに一石を投じる責任とは?
ここに非常に危険な数字があります。
以下は2009年6月30日の読売新聞からの抜粋です。
『今春の新入社員の約3割が、結婚のために活動する「婚活」を積極的にしないと
結婚できないと考えていることが、財団法人日本生産性本部の調査で分かった。
調査は3〜4月、同本部の研修を受けた新人の正社員3172人が対象。
「積極的に「婚活」をしないと結婚できないか」の質問については、
全体の31.1%が「はい」と回答し、男女別に見ると、男性35.2%、
女性25.6%と男性の方が10ポイント近く上回った。』
右も左も分からない新社会人は「相手を見極める術」を知りませんが
そんな状態で婚活を始めてしまったら・・・。
全財産を失った男性、今も後遺症で苦しむ女性、2人と同じ惨事がどんどん繰り返されます。
このままでは、悔し涙を流す人を次々、生み出してしまいます。
少なくとも私はこれ以上、同じ悲劇を見たくはありません。
彼ら、彼女らは『結婚「後」難民』の予備軍ですが、「少子高齢化」対策という大義名分がある以上
婚活推進という大きな流れを、私1人の力で止めることはできません。
しかし婚活を推奨すればするほど、同じような被害者を増やす結果が待っています。
それが分かっているのに、「他人のふり」をしていることは、私にはできません。
傍観者として指をくわえているのは、もう許されないのです。
誰も「そんなこと」を言わないからこそ、です。
大量の難民があふれる状況が予想されますが、何とか、水際で食い止めなければなりません。
それは新型インフルエンザの大流行を防ぎたいと願う医療関係者と同じ気持ちです。
本書は新型インフルエンザの予防ワクチンと同じです。
ウイスルに感染し、重症化しては手遅れです。
その前に予防接種することが大事ですが、婚活も同様です。トラブルメーカーと結婚してからでは手遅れです。
事後対策として問題発覚後、相談を受けても、解決できたケースは非常に少なく、
残念ながら、私は多くの人の涙を見てきました。その涙を無駄にしないためにも、
婚活には予防接種(危険の認識)を義務付ける必要があります。
「無防備なまま、婚活を行ってほしくない。
でも、リスクを承知し、危険を回避しながら、うまく婚活を行って欲しい」
これが私があなたへ、この本を通して伝えたい、たった1つのメッセージです。
あなたには、被害者、難民、負け組に転落することなく
さきほどご紹介した彼、彼女が掴めなかった「ごく普通の結婚生活」を自分の手で実現して欲しい。
本書を読み、ご自身の血肉にすることが、まずその第一歩になります。
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