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10年後に後悔しない離婚情報の玉手箱 <離婚協議書の巻>

75.住宅ローンを肩代わりしてくれる離婚条件とは?

 
■ 持分を持たないのでは家を主人の借金の抵当にされる心配はないのでしょうか。
私はよく知らないのですが、例えば権利書などは私が完全に保管していても、
主人が勝手に借金の抵当にすることなどは可能なのでしょうか。


<露木幸彦からの回答>

おっしゃる通り、奥様が所有権の一部を持てば、旦那様が無断で自宅に抵当権を設定することはできません。
抵当権設定には全所有者の同意が必要だからです。

ただ抵当権設定には、必ず権利証が必要になります。
奥様が保管しておけば、無断で設定することは、かなり難しくなります。
権利証の再発行もできますが、1年以上時間がかかるため
浪費癖がある方でしたら、そこまで待ちません。

また現状では登記が電子化しているため、権利証の再発行も
正当な理由がなければ認められないことになっています。

■ 連帯保証人になるということはこの先の住宅ローンの支払い義務が生じますよね。
連帯保証人にならないためには家の持分は持てないことになると、
借金の抵当にされないように家を買う方法はあるのでしょうか

奥様が連帯保証人になるということは、旦那様が支払いを遅延した場合は
奥様に請求がきます。
旦那様が自己破産した場合は、奥様の支払い能力がなければ
自動的に奥様も自己破産となってしまいます。

所有権を持つ=連帯保証人になる、というのは、奥様が単に所有権を持つ場合です。
例えば100万円でも奥様が頭金を出して、その分の所有権を持つ分には
連帯保証人になる必要はありません。
(あくまで取引銀行の判断ですが、原則はこのようになります)

上記との関連もありますので、所有権を持てない=自宅は買えない、とはならないと思います。
ただ所有権を持つのであれば、この方法になります。

■ 家が100%主人の持分となりますと、もし主人が消費者金融他などで借金を作った場合
家が主人の財産なら差し押さえられたりすることも考えられると思います。その場合を考えると、
私が5分でも家の持分を持っていればその持分は差し押さえられることはないのでしょうか。

旦那様がサラ金に借金したとして、その返済が遅れたとします。
そうすると旦那様の名前がブラックリストに入り、それは住宅ローンを組んだ銀行にも知れます。
住宅ローン契約ではブラックリストに入った場合は、一括返済を請求することができます。

もちろん一括では支払えませんから、銀行は競売にかけることができます。
実際に競売にかけるかどうかは銀行の判断ですが、そういった権利が発生するということです。
(競売は時価の10分の1程度ですから、銀行が大損してしまうため)

競売は「強制売却」の略ですので、奥様が所有権を持っていても関係がありません。
競売まで行ってしまえば、自宅を手放すのは仕方がない状況になります。

■ 離婚時に私に所有権を統一出来るかは銀行の許可が必要と教えていただきましたが、これは作成時に銀行に問い合わせをして頂けるのですか。または、それは離婚時の状況によるもので、書類作成時点では銀行も返事をくれないということでしょうか。

公正証書作成時に離婚する時期が確定している場合は、審査してもらえる可能性があります。
単に「万が一、離婚した場合の取り決め」ですと、銀行は審査をしません。
仮の審査をするのは、追加で融資が出る場合のみです。

■ 離婚時に所有権を統一出来ない場合は、主人がローンを完済すれば変更すると契約書に入れて頂くとして、そのローンの返済が滞った場合、私と子供は返済が滞っていても、死ぬまでその家に住む権利はあるということですか。

法律上は旦那様の自己破産とは関係なく、母子は自宅に住めることになります。
万が一、旦那様が離婚直後、亡くなってしまって
旦那様の所有権を第3者が相続してしまっても
引き続き、母子が住むことができます。

ただその相続人が同居を希望した場合、追い出すのは難しいといえます。

■ 例えば主人が自己破産しても住宅ローンは残す法律が出来たとお伺い
しましたが、その場合でも返済が住めば所有権は私に変更されるのでしょうか。

住宅ローンが完済すれば、自由に所有権移転ができるのは
旦那様が自己破産する、しないに限りません。
ただ、そのときに旦那様のOKは必要になります。

■ その契約書を作って頂けば、主人がローン返済を滞っても完済しても、いずれは私一人の所有権に変わると考えていいのでしょうか。

ローン返済中は銀行の承諾が必要、完済後は旦那様の了承が必要ということです。

■ 所有権移転の理由は何でもかまわないとのことでしたが、慰謝料と契約書に入れてもらったとしますと、いざ離婚することになった場合、書類を作成頂いたこととは別に、養育費の設定なども請求は出来るのでしょうか。

原則、将来(5年10年先でも)にむけた離婚協議書を作成することは可能です。
例えば、養育費月10万円で離婚する、と書けば、その内容で離婚することができます。
ただ慰謝料の場合、過大な金額の場合、その部分は無効になる危険があります。
自宅は1,000万円単位ですから、それに相当する精神的苦痛をいうのは、考えにくいです。
ですので、実際のところは「財産分与」を理由として、移転登記することになります。

■ 書類を作成頂く際に私がすることは印鑑証明と謄本を用意することと
お伺いしたのですが、主人が自署したり捺印する必要はないということですか。

今回、作成する場合の必要書類は
1.夫婦の印鑑証明
2.戸籍謄本
3.登記簿謄本
4.固定資産税の評価証明
になります。

公正証書には原則、旦那様も署名をします。
ただ委任状に署名をもらえば、代理人をたてることも可能です。

■ 「今の時点で了承をもらっておこう」ということは、現時点で了承をもらっておけば
住宅ローン完済前であれば銀行の了承さえもらえれば、住宅ローン完済後ならその時また
主人の了承をもらわずとも、所有権変更を強制できるということですか。
それとも完済前でも完済後でも、書類に了承をもらっていても、もう一度所有権変更時には主人の了承が必要になるということでしょうか。

法律的にいうと、一度合意したものはそう簡単に取り消すことができません。
取り消すのは「脅迫して書かされた」「白紙委任状を使われた」などを証明する必要があります。
ですので、今の時点で旦那様が「自分の了承なしに所有権移転して良い」と書けば
それは将来にわたって有効ということです。

登記手続には、委任状が必要です。
旦那様が「そんな合意はしていない」と言っても
証拠(公正証書)が残りますから、裁判所の権限で委任状なしで
登記することができます。

もちろん旦那様が委任状を書いてくれるのが一番スムーズですが
今の時点で移転登記を強制できるということです。

■ 例えば主人が破産しないまでもローンを滞っていた場合と仮定して
銀行のOKがもらえれば家は売却できるということですが、売却代金は所有権の持ち主や
その割合に関してと関係なく、全額ローンに強制的に充てられるということですか。
例えば長く主人が自己破産することなく、ローンを払わずにいた場合でも、私や子供は
どこまでも家に住み続けてもいいのですか。

ローン延滞時に銀行のOKをもらい、売却できた場合は
所有権の割合に関係なく」ローン返済に充当されます。
抵当権はそういった性質のものだからです。
ただ売却すれば、自宅は当然、他人のものになります。

旦那様が自己破産せず、ローンを延滞している場合、
銀行はその気になれば、競売にかけることができます。
そうすると上記のように母子は追い出されることになりますから
自己破産してもらい、住宅ローンだけ残してもらう方が得策といえます。
(競売にかけると銀行は大損するので、実際にやるかどうかは別問題です)

■ 「もしローンを延滞することがあれば、銀行に競売にかけられることのないよう、自己破産して住宅ローンを残してもらう方策をとる」という内容を盛り込むことは出来ますか。

書面に意思表示をして強制できるもの
あくまでそのときの判断で決めるもの
があります。

書面に意思表示をして強制できるものは前回お話した「所有権の放棄」です。

あくまでそのときの判断で決めるものは「自己破産するかどうか」です。
後者について例えば
1.競売にかけられる前に自己破産すると約束する
2.住宅ローン延滞、銀行から競売申し立て
3.旦那様が自己破産をしない
となった場合、奥様が代理人として自己破産の申し立てをすることはできません。
それは書面があったとしても、です。

ですので、このようなパターンになった場合は、仕方がないということです。
ただ銀行が競売するリスク、旦那様が自己破産せずにサラ金の借金を抱えるリスクを
考えると、このパターンになる可能性は相当に低いとは思います。

■ 主人が自己破産せずにローンを延滞し続けた時は、銀行は家を競売にかける
までに他の財産を差し押さえたりするのですか。

銀行が差し押さえできるのは自宅と、自分の銀行の預金だけです。
それ以外は対象外になります。

実際には公正証書を作成すれば、それ以外の財産も差し押さえ可能ですが
銀行の住宅ローン契約書は公正証書ではありません。

■ 主人にとっては「家を競売にかけられる」
以外にローンを延滞して困ることはあるのですか。

住宅ローンは通常の銀行ですので、支払いを遅延しても
職場に電話があったり、実家に請求されることはありません。
ただ、書面や電話で自宅に督促されることはあります。

また長期、住宅ローンを延滞すると、ブラックリストに入りますから
以後しばらくは(銀行によって異なります)
借金が出来なくなります。

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